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近況と雑記

葉桜と魔笛

 

乙女の本棚3 葉桜と魔笛 (立東舎)

乙女の本棚3 葉桜と魔笛 (立東舎)

 

 小学生の姪っ子と話していると、絵は小説を読むきっかけになるんだなと実感します。もう少し大きくなったら、この「乙女の本棚」シリーズをすすめたい。

老夫人が早くに亡くなった妹の思い出を語る『葉桜と魔笛』のイラストは紗久楽さわさん。着物の絵がとてもおしゃれです。室内の陰影の描き方も素晴らしい。

時は1905年、日本海海戦の最中。「私」はそんな大事が起こっているとも知らず島根の城下町に暮らしていますが、妹の病がいよいよ手のほどこしようがないとわかった5月なかばのある日、砲弾の音を聞きます。

どおん、どおん、と春の土の底の底から、まるで十万億土から響いて来るように、幽かな、けれども、おそろしく幅のひろい、まるで地獄の底で大きな大きな太鼓でも打ち鳴らしているような、おどろおどろしい物音が、絶え間なく響いて来て、私には、その恐ろしい物音が、なんであるか、わからず、ほんとうにもう自分が狂ってしまったのではないか、と思い、そのまま、からだが凝縮して立ちすくみ、突然わぁっ! と大声が出て、立って居られずぺたんと草原に坐って、思い切って泣いてしまいました。

「私」の生きている小さな世界に、妹の死の予感と恐ろしい不思議な物音によって亀裂が入る場面。この読点の打ち方、全体のリズム、たまりません。 

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